トレモロホリディ
メイン道路に出た途端、ミナト君の手が私の肩からゆっくりと離れる。


その瞬間。


どうしてだか、なんとなく寂しくなった。


横に並んで歩くミナト君は、私より頭一つ分くらい高い身長。


サラサラの金髪からチラリと見える横顔は、鼻も高いし、中性的な美しさだ。


眉と目の距離が短くて、くっきり二重で、ハーフだと言われれば信じてしまいそう。


さっきの男の人の話で盛り上がっていたら、あっと言う間にほなみに着いてしまった。


「じゃあ、また明日ね。バイト頑張って」


優しい瞳でにっこり笑って手を振るミナト君。


「ミナト君も頑張ってね。行ってらっしゃい」


私も手を振り返し、お店のドアを開けた。


「お疲れ様でーす」


店の中に入ると、穂波さんが開店準備のためフロアに出ていた。


「お疲れ様。

あれ?

今のってミナト君だった?」


「あ、はい。

偶然会ったので、ここまで一緒に来たんです」


「一緒に?」


「はい」


「ふぅん…」


なぜか不思議そうな顔をする穂波さん。


そういうわけで。


翌日から私とミナト君は、一緒に通勤する毎日が始まったのだった。

< 80 / 500 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop