トレモロホリディ
「あのー、多分友達だと思いますけど…」


私の言葉に、明らかにイヤそうな顔をする女性。


あれ?


私、この顔をどこかで見た気がするんだけどな。


どこで見たんだっけ?


こんな夜中にこんな服装でほなみにいるってことは、飲み屋関係の人なんだろうけど。


「ミナトはさ、誰にでも優しいの。

別にアンタだけが特別ってわけじゃないんだからねー」


「は、はぁ…」


一体、何が言いたいんだろう?


「本気になっても無駄だからね。ミナトとは絶対に付き合えないよ」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。

何の話かさっぱり見えないんですけど」


なんだかちょっと怒ってるよね。


どうして怒られないといけないのか、さっぱり意味がわからない。


彼女は一度水を口にすると、両腕を組み、椅子の背もたれにもたれかかった。


「あたしと同じ職場の子が見たって言うのよ。

あんたとミナトが一緒に歩いてるところを。

しかも、何度もね」


そ、それって…。


一緒に通勤しているところを見たってことかな?


「あのー、私とミナト君。

通勤する時間も方向もたまたま一緒だから、話をしながらここまで歩いてるだけですよ」


私の言葉に、彼女はますます怒りをあらわにしていく。

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