クライムハザード

「以前ご報告した通り、採取されたのは被害者の指紋だけでした。ダイヤルボタンからは左手の指紋が検出されています」

「ということは、きっと左利きね、彼女」

(普通、利き手でダイヤルを押すからな)

 彼女は、書類に目を通しながら、紅茶を一口。

「ところどころ指紋が薄れている箇所が見られますが、犯人が手袋をした状態でそこに触れたためと思われます」

「受話器は?」

「特には。ご指摘の通り、右手の指紋、及び掌紋の上から、左手の指紋、及び掌紋が検出されています」

 ふぅむ。

 顎に手をやり、彼女は唸る。その姿は、どこか愉しげだった。まるで難解なパズルを解くように。

< 57 / 105 >

この作品をシェア

pagetop