クライムハザード

「さて、出掛けようか」

 思わぬ言葉に、俺はたじろぐ。

「出掛けるって、何処に」

「野間さんとこ。あの子、今ホテル住まいしてるらしいの。実家は関西らしくて……お姉さんのとこに帰ろうにも、殺人現場だから、ね」

 そう言って彼女は立ち上がると、ロッカーから取り出した黒々しいコートをさっと羽織った。

「なぁにぼんやりしてるの? 置いてっちゃうよ」

「うへぁ?」

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。彼女はふっと小さく笑みを零し、

「いつまでも安楽椅子探偵を気取ってられないからね」

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