輪廻する今日、六月一日。
 僕は間髪入れずにポケットから剃刀を取り出し、鋭い刃を自分の左手首に押し当て――引いて見せた。

 思ったよりも深く切ったらしく、ぷくっと浮き出してきた赤い雫は一本の線となって顔を出す。

 それを見た3人は、目を見開きながら手で口を押さえ、吐き気を催す。


「春夏秋冬、ついにトチ狂ったのか?」


 そりゃ、まあ……同じ六月一日を66回も繰り返していたらおかしくもなるって。……僕はまだ狂っていない、正常な方の思考をしているとは思うけどね。

 ……というよりかは、狂っていない、正常な方の思考だと思いたいだけなのかもしれないけど。


「うっわ、きっしょ」


 うん。同感。僕にもともと自傷癖があったわけじゃない、“こんな動きをしたらお前らはどんな反応をしてくれるのか?”という突発的な思い付きでやったものだから、余計に。


「そのまま死んじゃえよ」


 死ねるものなら死にたいね。今までに……えっと、20回くらいは自殺してその日を終えたけど、目を開けたら自分のベッドの上なんだよね。しかもご丁寧に朝になっちゃっていてさ。死ねないんだよ、あー、残念。

 つぅーっと滴り落ちていく赤い水を見せ付けるかのように差し出すと、3人はヒィッ!と情けない声を出して学校の方へと走っていった。

 なんだ。つまらない。もっと面白い反応をしてくれたらいいのに。
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