輪廻する今日、六月一日。
 ……まあ、無視もガン見も慣れてしまっているから、特に何も思わないけれど。

 ……ん?

 みんなの視線は、僕ではあるけど、僕じゃない。……どこか僕の一部分を見つめているような……。


「ああ。これ?」


 血がダラダラと伝う自ら切った左手首を、みんなに見えるように振り上げると、シンと静まり返っていた教室は一瞬のうちに阿鼻叫喚へと変わった。

 あれ、そんなに深く切っちゃっていたのかな?血がドクドクと、とまらないや。

 それにしても、そんなにパニックにならなくてもよくない?深く切っちゃって血がとまらないといっても、ただの切り傷だよ?

 君達さぁ、もしかして料理とかで誤って自分の指を切っちゃっても、そんなにパニックになるのー?大袈裟すぎだっつーの。


「おまえらー!何を騒いでいるんだ?廊下まで筒ぬけだぞー?ほら!ホームルームを始めるから早く席に着けー!」


 日陰乃さんと共に、担任の戦刃(いくさば)先生が教室の中に入って来た。


「先生……!あの、春夏秋冬くんの、左手首……が……怪我を……」


 クラスメートの1人が、恐る恐るといった様子で戦刃先生に声をかけた。

 チッ。余計なことを……。
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