甘くて苦い
「やっぱり、持つべきものは友だな。」
私に抱きついたまま、速水君はぐんぐん廊下を進む。
「危ないから。ね。」
つい子供をあやす様な口調になってしまう。
そのままリビングに押し込まれ、ソファーに押し倒される。
「痛っ。ちょ、重っ。」
恋人だったら、イチャイチャと言えるシチュエーションかもしれない。
でも、実際は酔っ払いと介抱する者でしかない。
「寝るなら退いて、ほら。」
押し退けようと試みるも、直ぐに無駄な抵抗だと悟る。
顔こそ童顔だが、空手の有段者なのだ。
道場通いを続けるその身体は、固く、重い。
「はぁーっ…。」
盛大な溜め息をつき、だらりと垂らした手が床に当たる。