甘くて苦い
大学1年の夏、私はベランダづたいに侵入した隣の部屋の先輩に、襲われた。
その先輩は、かなり酔っていた。
生まれて初めて、しかも自分の意思に反して男性に組み敷かれた。
悲鳴をあげたのは、一瞬だった。
直ぐに思い切り頬を殴られた。
恐怖で、声を上げるどころか抵抗すら出来なくなった。
男の口から漂うアルコールの匂いに、吐きそうだった。
母の顔が脳裏に浮かんだ瞬間、玄関から鈍い衝撃音がした。
次の瞬間には、私の上にいた男は、文字通りふっ飛んでいた。
涙で歪んだ見慣れた部屋に、速水君がいた。