あたしの証~番外編~
だけど、その日は違った。


ちりんちりんと、来客を知らす鐘が鳴る。
新規のお客さんだろうか?

普通は電話とかあるんだけど、こうやって訪問してくる人もいたりする。


だから、なんら不思議なことではない。


「いらっしゃい、ちょっと待っててくださーい」

そう声をかけてから、一旦施術を止めようとするときょうさんがそれを止めて入り口までいってくれた。


固まったきょうさんは、来ているであろうお客さんに何も言葉を発さなかった。
営業スマイルさえも出ていない。



何だ何だ?


「なつ、やっぱりお前行って」

「え?何でですか?」

「いいから」


きょうさんは固まった顔のまま、俺にそう言って早々に自分のデスクへと戻る。

それに軽く息を吐いてから、俺は客に一言断ってから入口へと向かう。


誰だっつーの。


だけど、その人物を見た俺はきょうさんと全く同じ態度をとっていた。
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