年上のあなた
「俺、まだ仕事残ってたんだ。」
わざとらしく手を叩き、林が立ち上がる。
自分の座っていた椅子を綾先輩に差し出すと、手を振って去って行った。
綾先輩は、戸惑いながらも腰をおろした。
「…みっともないよな、俺。」
「そう?嬉しかったよ、私は。」
そう言われて、少しほっとした。
「でも…頭ポンポンとか、勅使河原君でもするんだね。私、一度もして貰った事ないから、そう言う事しない人なんだと思ってた。」
「それは…。」
年下の俺が、凛とした綾先輩にそんな事をするなんて、正直抵抗があった。
したくても、してはいけないと、勝手に思っていた。
「その子達の事、ちょっと羨ましいなって思っちゃった。」
「え?」
綾先輩は、困っているのか笑っているのか分からない顔をした。