年上のあなた
「要は、本気で好きになったら、余裕なんか無いって話だろ?」
素面で、しかも職場でこんな話をしてるんだから、そうかもしれない。
「林君、あの…。」
聞き慣れた柔らかい声に、俺はバネ仕掛けのおもちゃみたいに勢い良く顔を上げた。
林の後ろに、綾先輩が立っていた。
ジャケットにタイトスカートにハイヒール。
隙の無い戦闘服姿で、照れ臭そうに微笑んだ。
焦る反面、今すぐ押し倒したい衝動にかられた。
「いっ、いつから…。」
「林君の、恋だな、恋…のあたりかな。」
林が楽しげに笑った。
どうやったかは知らないが、こいつの仕業なのは間違い無い。