妖精と精霊と人間と

第十五話 神殿。

 小屋を後にして二日ほど経ったころ。山のふもとまで来た所で、北斗は嘶(いなな)いた。すると、遠くから伝説の白馬と黒い四頭の馬が走ってきた。五頭は北斗に擦り寄ると、美香たちの前で立ち止まった。その姿は、まるで美香たちが乗ってくれるのを待っているかのようであった。美香は北斗に、明は伝説の白馬・メアラスに、デント・リデロ・ラーグウェイとブラウン・バンクスは黒馬のイオ・ナキ・ゼリム・アイルにそれぞれまたがった。ユニコーンと馬たちは、山の上の神殿を目指した。千年前の戦いで、北の王城・シュベレスの長グリフォンの右腕だった、半鳥半馬のヒッポグリフがおさめている山上の城・ウィングへと。
 ヒッポグリフは、グリフォンの雄と雌馬との世にも稀な交配によって生まれた生き物である。鷲の頭とくちばしを持ち、ライオンの前足と爪、豊かな羽に覆われた翼を持ち、残りは馬の身体である。彼等は忠誠心があついとともに、とても気高い生き物でもある。彼らを侮辱すれば、それは身を滅ぼす事にもなるのである。
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