妖精と精霊と人間と

第十六話 死。

 それから三日ほど馬に乗って歩いた。馬に乗りなれていない美香や明にとっては、大変だった。だが、二人はすぐに乗り方が覚えられるほど、上達は早かった。
 三日目の夕方、丘の上にある小さな家に辿り着いた。その家から、炎が上がっているのが見えた。それが魔法による炎だと気付くのに、そう時間はかからなかった。バンクスは思い出した。それが師匠の家であると。自分に魔法を教えた、世界最高の錬金術師であるニコラス・フラメルの家だと。
 「シショー!」
 バンクスは叫んだ。馬から飛び降りて、師匠の家へと走っていった。師匠の姿は見えない。一匹のコウモリが、そこから飛び去っていくのが見えた。だが、今はそんなことに気をとられている場合ではなかった。師匠―――ニコラス・フラメルは、家の入り口付近に倒れていた。
 「師匠!」
 バンクスは、入り口付近に倒れている師匠を抱き起こすと、炎から離れた。バンクスは、師匠の頬を叩いて、その名を呼び続けた。
 「うぅっ・・・バンクス、か?」
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