妖精と精霊と人間と

第二十二・五話 第二部 サラマンダー

 サラマンダーは、盗賊だった。どんなものでも奪った。金でも、女でも、命でも。彼には、真の友がいた。彼の友は、『白銀のK』と呼ばれる大泥棒だった。彼自身も、『紅の鬼』と呼ばれていた。そんなある日、『紅の鬼』は仕事で始めてミスを犯した。決して犯してはならない簡単で単純なミスを。彼をかばうように、真の友は盗みを働いた村の人々に捕まった。その夜、彼は真の友を助けに向かった。友はすぐに助ける事が出来た。だが、村人は『紅の鬼』を革のベルトで縛ると、火あぶり台に乗せた。真の友が首切り台に乗せられた。それと同時に、彼の火あぶり台にも火が回る。目の前が彼の通り名に染まる。不思議と、熱さは感じなかった。首切り台に登った真の友は、彼に届く様に叫んだ。『俺が居なければ、お前までこんな目にあうことは無かったのに・・・ごめんな?』そう言うと、一筋の涙が真の友の頬を濡らした。その涙はすぐに紅に染まった。彼は炎の中で叫んだ。真の友の名を。その声は友の耳には届かない。届くはずも無かった。無常にその声が響く中、自分の火あぶり台に薪の代わりとでも言うかのように、友の身体が放り込まれた。美しかった白銀の髪が、友を殺してしまった自分と同じ紅に染まっていた。『紅の鬼』と呼ばれた彼の瞳からは、涙が溢れ出していた。彼が朽ち果てようとする瞬間、炎の精、不死の鳥・フェニックスが現れた。彼はフェニックスの羽に触れ、その生き血をすすった。彼は灰になった。そして、トカゲとなって復活した。フェニックスは、自身の炎にトカゲを包み込むと、人の姿にした。肩までの前髪と後ろ髪、その色は瞳と同じ紅、服は黒の長ズボンに、前が空いたベストを着ていた。そして、黒の皮ベルトで足と腕を拘束した。彼がそう望んだから。これ以上、何も盗まないように・・・。彼は炎の中で再びトカゲに戻った。そして、丸いボールのようになった炎を、フェニックスは飲み込んだ。四重に固定されたボールは、トカゲの罪を洗い流すまで壊れる事は無い。
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