妖精と精霊と人間と

第二十三話 儚い思い出。

 北斗と美咲は四階の部屋に着いた。明はこの部屋に居るはずだ。だが、人が居るような気配はしない。そう『人』が居る気配は微塵もしなかったのである。遠くから、前にも感じた事のある死者の臭いがした。美咲と北斗は、その臭いの現況を見て凍り付いた。目は生きておらず、その身にはこの世界での最恐の防具と最恐の剣を装備していた。そして、頬にはデーモンキングの朱色のダイアがあった。
 「待ってよ・・・・嘘だろう・・・?だって・・・・・!」
 「明!おい、明!目ぇ覚ませよ!覚ましてよ・・・・明ぁ・・・・」
 北斗の後に美咲が大声で叫ぶと、明は破壊の剣をふりかざした。間一髪で、北斗の長い角が美咲をかばっていた。
 「・・・・どいて、北斗!」
 深呼吸してから美咲は叫んだ。明の攻撃をふわりふわりと交わしながら、しっかりと杖を握り締めた。
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