妖精と精霊と人間と
 「美香・・・お前に教えることは、もう何も無い。」美香の頬に手を触れながら言うと、彼女はエルフの手を握った。「最後に。お前に、こいつをたくそう。」
 エルフの青年がにっこり微笑むと、美香はたてに頷いた。一瞬暖かくなった彼の手を両手で握って。
 「ディアッカ・・・姉さん・・・今、逝くよ・・・」
 ラーグウェイは最後にそう呟くと崩れ落ちた。そして、エルフの生まれ育つ森へと飛んでいった。ノームはその残光を砂へ変えると、持っていた小さなビンに詰めて美香に渡した。四大元素の精霊の中で、最も扱いが難しいとされるサラマンダーの呼び出し方の紙と共に。
 「ラーグウェイ・・・・・」
 「行こう、美香!まだ、戦いは終わっていないよ?」
 北斗がそう言うと、美香は黙ってうなずいた。光り輝く小瓶と、最後のメモを抱きしめて。
 皆は立ち上がった。そして、部屋の奥にある階段を駆け上がった。最後の戦いに挑むために。
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