妖精と精霊と人間と
 「尊厳の天使・ビナエルよ。」
 父がそう言うと、片手に十字架をもった者が舞い降りた。目を覚ました民が、ぞくぞくと城から出て来て跪いていった。
 「我が息子、ノース・グリード・スターに、神の王座を与えたまえ。」
 「承知した。」
 ビナエルはそう言うと、ノースの頭上に手をかざした。彼の背に、美しい白い羽が生えた。兄や父のような羽が。あの闘いの時とは違った、優しく強い羽が。
 「お前を、北の王城の主とする。そして、エネル・グリード・スターよ。彼の無き時、この城を、民を統治せよ。」
 「「仰せのままに。」」
 ノースとエネルがそう言うと、ビナエルはスーッと消えていった。それと同時に、民から歓声が漏れた。これで、ノースは北の王城の主となった。エネルも、ノースが居ない時にはこの城を管理する事を認められた。
 「では、父上。私は、山上の城・ウィングに帰ります。」
 「嗚呼・・・」
 父がそう言うと、エネルは空へと飛び立っていった。大声で嘶きながら。まるで、弟の即位が自分の事のであるかのように嬉しがって。嘶いた彼の後を、彼の民は追っていった。それは本当に美しい光景だった。
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