妖精と精霊と人間と
 「美咲!」
 「何だ?」
 鏡の前の少女の問いに答えるように、同じ服装に同じ髪型の女性はそう言った。
 「いか・・・ないで・・・お願い・・・おいて・・・いかないで・・・消えないで!」
 鏡の前の少女はそう言うと、鏡の中の少女に泣きつくような体勢になった。鏡の中の少女は、彼女を支えるような体勢になっていた。鏡の中と外で、違う体勢になるのだから、魔法の鏡とは不思議なものである。
 「美香・・・無理だ・・・」
 鏡の中の少女は、首を横に振った。
 「いや!」
 「美香っ!!」
 「解ってる!解ってるよ、そんなの!もう、無理なことくらい・・・一つに・・・戻りたい。生まれた頃に、戻りたい・・・戻りたいよ!美咲。」
 大声で鏡に向かってそう言った。瞳から、ボロボロと涙が零れ落ちる。
 「美香・・・」
< 213 / 218 >

この作品をシェア

pagetop