妖精と精霊と人間と
 「出来ないん・・・でしょう?」
 その言葉に、鏡の中の女性は頷いた。ただ、黙って頷いた。
 「美咲・・・この身体、反すから!」
 「お前に、惚れていた男たちの事を・・・どうするんだ?」
 「それはっ!・・・・それでも、あたしはっ!」
 そこまで叫ぶと、鏡の中の少女は目を丸くして扉のほうを見つめていた。
 「あきら・・・ほくと・・・」
 彼女がそう言うと、美香はそちらを振り返った。鏡の中の少女はその場に棒立ちになっており、鏡の前の少女はその場にへたり込んでいた。
 「悪い・・・邪魔したな。」
 明がそう言って扉を閉めようとすると、北斗がその手をがっしりと止めた。
 「美香・・・美咲・・・」
 そう言って北斗が部屋に入ると、美香の目からボロボロと涙がこぼれた。
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