妖精と精霊と人間と
 「バンクス!」
 北斗はそう叫ぶや否や、人の姿(ユニコーンじゃ隠れきれなかったから。)になっていることも忘れ、ホビットの元に駆け寄った。ホビットは不思議そうな顔をしたが、それがノースであると解ると安心した様子だった。しかし、その安息も長くは続かなかった。北斗がユニコーンに戻った瞬間、その身体に激痛が走った。その身体からは、銀色の血が流れでた。ラーグウェイは、ユニコーンの血を舐めようとしたオークの頭を、その矢で素早く射抜いていた。
 「ノース様!」ブラウンはそう叫ぶと、北斗の元に駆け寄って叫んだ。「森の聖なる樹木よ。我にこの者の傷を癒す絶大なる力を!フル・ヒール!」
 北斗の傷は、徐々にふさがっていった。明達が、ディゴリスのオークに捕らわれた者達のカセを壊している間、美香はずっと俯いて何やら呟いていた。
 「美咲・・・今だけ、貴方にこの身体を反すわ・・・だから、だからお願い!ディゴリスのオークを壊滅させて・・・!これじゃ、カワイソウだよ・・・・・・」
 そう言って涙で濡れた目を瞑って見開くと、彼女はその涙を左手の甲で拭い去った。
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