妖精と精霊と人間と
　「このあとどうする～？」
　美香が北斗にそう聞くと、バンクスが美香を見上げてこう言った。
　「黙れ、人間。」
　美香はカッと目を見開くと、バンクスを連れて外に出た。美香から美咲へと変わる途中なのだろう。そのオーラに殺気が混じっている様にも見えた。『キレた。』皆は即座にそう思った。皆があわてて追いかけると、バンクスは美香の横に鎮座していた。
　「遅いぞ。」
　バンクスは全員にそう言うと、美しいハーモニーの天使・アルベルと歌の妖精・ソング、そして美香のオカリナの曲を聞いていた。曲が終わると、バンクスは美香が気に入ったのか、いっこうに離れようとしなかった。
　「流石・・・ガキの扱いに慣れているな。」
　明がそう呟くと、バンクスはこう返してきた。
　「餓鬼はお前だ、人間。妖精を甘く見るな。俺より年下だろ。少し、言葉を考えろ。」
　明が彼につかみ掛かると、デントがそれを止めた。
　「殴る、良く、ない。殴る、痛み、絶望、それのみ、生む。ばんくす。お前も、間違い。そう言う言葉、使わない方、良い。ノース、そういったもの、好きでは、ない。」
　デントがそう言うと、バンクスは北斗を見上げた。北斗は、こくりとうなずいた。
　「お前に、ノースもこいつもあげない。特に、ノース。絶対やらない。」
　バンクスはそう言うと、美香とノースにしがみついていた。明の頬がピクリと引きつったのが、誰の目にもよく解った。
< 93 / 218 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop