あふれる涙のドロップス

 ただ呆然としているアタシ。



 手で顔を覆う立川海斗。



 ひたすら応急処置を行う、七瀬リン。




 やがて、かすかにピーポーピーポー………と、救急車のサイレンが聞こえてきた。




 そして、救急車が、アタシたちの前に現れ、ストレッチャーで、葉山くんを運び込んでいった。





 *  *  *





「あの……葉山、大丈夫ですか」






 泣き腫らした目で、立川が医師に訊く。





「大丈夫だと……思いますけどね」




 語尾が、自信なさげに萎む。




 葉山くんの、固く閉じられたまぶたの下からは、何も読み取れない。



 
 穏やかな顔をした、葉山くん。




 微かに笑っているような感じだ。
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