君と歩く未知
アタシは高校に入ってすぐ、美術部に入部した。
最初はどの部にも入る気はなかったけど、部活動紹介のオリエンテーションで美術部の人が真っ白な画用紙にサラサラと絵を描いているのが素敵だった。
…アタシは真っ白なモノを見ると、あの時のことを思い出す。
お父さんが真っ白いお皿でお母さんの頭を殴った…あの事件を。
…だからアタシは真っ白なもの全てを塗りつぶしたい。
少しでも事件を忘れたいから。
だからアタシは美を追求しようというわけでも、絵を上手くなろうというわけでもなく淡々と絵を描いてる。
あと、高校に入ってからバイトを始めた。
…それは、家にいて高額収入可能な「チャット嬢」という仕事だ。
男の人とチャットで話すだけで、お金がもらえる。
もちろん風俗な仕事だから、名前も年齢も嘘つき放題でお母さんにはもちろん秘密。
なぜバイトを始めたかというと、生活費も、お小遣いも、お母さんが稼いだお金で足りてるんだけど大学進学の資金が心配だったから。
「黙って近所の喫茶店でバイトしてた」って大学進学の時に資金を出せば、別に怒られずに済むだろう。
だから、現在アタシがお母さんに内緒で最近新しく作った通帳には30万円が入っているんだ。
つくづく、親不孝な娘だ。
< 15 / 202 >

この作品をシェア

pagetop