君と歩く未知
二つの道が重なる時…
 それから五年の歳月が流れた。
アタシとカズくんは二十三歳。
アタシは大学を卒業して念願だった高校の美術の教師になったんだ。
カズくんは数年前から介護士として働いている。
 先日、アタシとカズくんは籍を入れた。
そして、今日から新しいこの街でアタシとカズくんの生活が始まる。
「カズくん!この棚ってこの辺に置けばいいかな?」
アタシとカズくんは引越しの真っ最中。
「あー、そこはダメダメ!そこにはアレ置くんだろっ?」
「そっかぁ!でもアレ、この部屋に入るかなぁ?」
アタシたちはこの安いアパートに二人で住むことにした。
他にも良い物件はたくさんあったんだけど、どうしてもここが良かったんだ。
…ここはカズくんとアタシの思い出の場所だから。
「弥生!アレ入れるから手伝って!」
カズくんの声が玄関から聞こえた。
アタシは慌てて玄関に走った。
「慎重にね、ぶつけないでね…」
「わかってるって…」
アタシとカズくんは慎重にアレを運んでいた。
そして上手に部屋の中に入れて、歓喜の声を上げた。
「やったー!これで完璧だねっ!」
 アレというのは、アタシとカズくんの合作のこと。
大切に大切にしてきたこの合作。
きっとアタシたちが、おじいちゃんとおばあちゃんになってもずっとこの合作を守って生きるだろう。
 この安いアパートは実はあの海が見えるんだ。
そう、アタシとカズくんが付き合うことを決めた海…
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