君と歩く未知
 アタシとカズくんはベランダに出た。
「キレイだね…海」
アタシがそう言うと、カズくんは無言で頷いた。
大きな波の音が聞こえる…
あの日とまるで同じだね。
カズくんはアタシの手をぎゅっと握ってくれた。
「良い所だな…」
カズくんがぼんやりつぶやいた。
アタシはふと思い出してカズくんに言った。
「そーだ!カズくんに見せたいものがあるの!」
そう言ってアタシたちは部屋の中に入った。
アタシは大きなバッグから、大切に風呂敷に包んだ長方形のものを取り出した。
「何これ?絵?」
カズくんは興味津々に覗き込む。
アタシは風呂敷をそっと解いた。
そこから出て来たのは、カズくんと別れてすぐにアタシが美術室で発見した絵だった。
アタシが赤ちゃんを抱いている、心が温かくなる絵。
「これって…弥生ー!やっぱりお前が持って帰ってたのかー!あの頃、突然なくなったから焦ったんだぞ」
アタシはニコニコ笑って言った。
「だってこの絵を見たとき嬉しかったんだもん!…だからどーしても欲しくなっちゃったの!」
カズくんは照れてアタシの頭をクシャクシャと混ぜて言った。
「…でも、もうすぐこれが現実になるじゃん」
アタシは静かに頷いた。
「だから、これを前の赤ちゃんだと思って大切に持っていようと思って…」
カズくんは頷いた。
 その時、外でクラクションが鳴った。
それと同時にカズくんのケータイが鳴り響いた。
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