君と歩く未知
 「もしもし、直紀?あぁ、荷物ありがと。今すぐ下に下りるから」
カズくんはそう言って電話を切った。
「みんなもう来てくれたの?」
アタシが訊くとカズくんは笑って言った。
「あいつらって手伝いに来るのか、邪魔しに来るのかわかんねぇよな」
アタシは元気良く笑った。
カズくんはそんなアタシを見ながら言った。
「じゃあ、オレ下に降りてくるわ。荷物運ぶよ」
アタシは立ち上がった。
「アタシも行くよ」
カズくんはそう言ったアタシの肩をトントンと叩いて言った。
「妊婦さんは、体を大事にしなきゃダメ!だから、ここにいなさい」
アタシはカズくんのそんな優しさが嬉しくてニッコリ笑った。
カズくんはそんなアタシの頭を撫でて走って玄関の方へ行ってしまった。
 …アタシは妊娠したんだ。
前の赤ちゃん…産んであげられなかったから、今度は大事に産んで育ててあげなきゃ。
だけど、前の赤ちゃんのことは絶対に忘れないよ。
あの子はアタシの…イヤ、アタシとカズくんの最初の子だもん。
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