君と歩く未知
 カズくんはもう一度アタシを抱き寄せた。

今度は優しく、ふんわりと、壊れそうなアタシの心を抱きしめるように。

そして、そっとアタシをカズくんの体から離したと思うと

アタシに、静かにキスをした。

世界で一番、不幸だったアタシは

もしかしたら、今、世界で一番の幸せ者なのかも知れない。

アタシはそっと目を閉じた。

夏になったばかりの暖かい風に

カズくんと二人で包まれているのだとわかった。



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