君と歩く未知
 「でもさ、弥生ちゃんが口開いてくれて、アタシ超嬉しかったよっ!…もしかしたら、アタシみたいなヤンキーは嫌いかと思ってちょっとだけ心配しちゃった。でも、仲良くやっていけそーだねっ!」
 「でもさ、弥生ちゃんが口開いてくれて、アタシ超嬉しかったよっ!…もしかしたら、アタシみたいなヤンキーは嫌いかと思ってちょっとだけ心配しちゃった。でも、仲良くやっていけそーだねっ!」
そう言った美和ちゃんはちょっと幼く見えた。
言った後、急に照れたように笑って直紀くんの腕にぎゅっと抱きついた。
アタシの胸はキュンって小さく鳴って暖かい気持ちがいっぱい。
「ううん!美和ちゃんのことアタシ好きだよ!…アタシもさ女友達ってあんまりいないんだ。あんまりってゆーか、全然いないの。だから美和ちゃんと仲良くなれて嬉しいっ!」
あまりに素直な言葉がアタシの口からスラスラと出で来る。
普段のアタシとはまるで違った。
意地張って誰とも喋らないアタシじゃなかった。
それに気が付いたのか、カズくんはアタシの手をぎゅっと握った。
 「ってゆーかさ、弥生ちゃんは、なんで女友達がいないわけ?」
竜平くんに尋ねられてアタシはドキッとした。
「確かに。弥生ちゃん、すっごく良い子じゃん」
直紀くんも口を挟んできて、アタシはすっかり動揺してしまった。
なんて答えよう、なんて答えるのが無難なんだろう…
ほんの少しの沈黙が心にのしかかる…
「…弥生ってさー、ホントに人見知りが激しいんだよ!オレと最初に会ったときなんか、オレのこといきなり『木塚!』って偉そーに呼び捨てするし、ニッコリとも笑わないし…今よりもっと酷かったなー」
それを聞いた三人はケラケラ笑った。
アタシは一つ溜め息をついてカズくんの顔を見た。
いつもよりほんの少し精悍な顔つきをしているようだった。
< 55 / 202 >

この作品をシェア

pagetop