君と歩く未知
 アタシはぎゅっとカズくんの手を握り返した。
普段は照れてできない行為…
ほんの少しだけ勇気を出して握ったカズくんの手。
温もりが溢れていてそれだけでアタシは幸せな気持ちになれたんだよ。
 
 …あの頃のアタシは、その手の温もりのことをずっとカズくんの体温だと思ってた。
だけど、それは違ったんだよね。
なんでアタシは気が付けなかったんだろう。
…イヤ、照れくさくて気付いていないふりをし続けた。
それこそが愛だったんだよね。
あの頃の美和ちゃんたちはちゃんと愛に気付けていたのかな?
幼い恋だったのかな?

…アタシはもう二度と、そんな温かい手に触れることはできないだろう。
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