君と歩く未知
 アタシはカズくんに寄り添った。
カズくんもそんなアタシを抱き寄せてくれた。
「キレイだね…」
カズくんは笑みを含んだ優しい声で相槌を打った。
「今日は来て良かったな。美和たちがふざけた誘いしてくるもんだからさ、最初は断る気だったんだけどさ…でも、やっぱり弥生と一緒に過ごしたかった」
カズくんはゆっくりとそう言った。
「アタシもだよ。カズくんと花火見たかった…」
カズくんはそう言うアタシの頭を小突いた。
アタシがカズくんの顔を見ると、カズくんは照れたように笑っていた。
そんなカズくんが愛しくてたまらない。
 こんなに愛しい人がいる。
こんなに素晴らしい日々を生きてる。
アタシは幸せなんだろうなって、ふと思ったよ。
それは全部カズくん。
カズくんがアタシの全てなの。
 花火が…今夜の花火の中で一番大きくて鮮やかな花火が、打ち上がった。
その明りで、アタシたち二人の影が映し出された。
二人の影が一つに溶けている…
こんな風に、ずっと一緒にいようね。
アタシはカズくんの頬にそっとキスをした。
カズくんはニッコリ笑ってアタシの唇にキスを返してくれた。

 どうしてアタシはあの頃、カズくんの存在を当たり前に思ってたんだろう。
隣にいるのは、カズくん。
笑ってくれるのは、カズくん。
抱き締めてくれるのは、カズくん。
…そんなことが全て当たり前だって思ってたよ。
当たり前なわけないじゃない。
もっと大切にしてあげれば良かったんだって今さら思うんだ。
ねぇ、カズくんの心の傷はもう癒えた?
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