君と歩く未知
 「違わねぇ!…昨日電話で和哉から全部聞いたんだよ!和哉…昨日のお前の態度があんまりに冷たいから、おかしいって思って後からお前を追いかけたんだよ!もしかしたら本気で頭痛くって仕方ねぇのかも知んないって…帰る途中でお前が倒れたら大変だって思って、和哉は…お前を心配して追いかけたんだよ!そしたら、お前は…」
アタシは目の前が真っ暗になった。
竜平くんとアタシの間にやましいことがなかったのは確かだ。
だけどカズくんが、アタシたちが笑いながらお店に入って行くところ見ていたのならそれは誤解されても仕方ないかも知れない。
「…嘘」
アタシはその場に泣き崩れて、直紀くんに話の経緯を全て話した。
…カズくんがアタシに隠しごとをして、絵を見せてくれなかったこと。
…頭が痛いって言っても、素っ気ない態度を取られたと思い込んだこと。
…そのことを帰り際に玄関で偶然会った竜平くんに相談したこと。
…そして、お腹が減ったという竜平くんと一緒にお店に入ったこと。
直紀くんはやっと納得したように頷いた。
「…アタシ、どうすればいいの?カズくんに、どうやったらホントのこと、伝えられるの…?」
アタシはひとしきり泣いた後、直紀くんに尋ねた。
「弥生、一生懸命謝れ。和哉はきっとわかってくれる。…でもな、その前に、昨日の和哉がどんな気持ちだったか考えてみろ。…この和哉の絵、昨日の夜のうちに運んだんだ。オレも和哉を手伝って一緒に運んだんだけど…和哉、泣いてたぞ。この絵、弥生ばっか描いてるじゃん。この絵を運ぶ時、和哉がどんな気持ちでいたか…よく考えてやれ」
アタシはそう言われて、また涙が溢れてきた。
自分のしたことの軽率さに情けなくなって涙が止まらないよ…
…あれっ、ヤダよ…苦し…
息が…できないよ、カズくん…!
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