優しくないっ、優しさを感じない!
『こんな俺じゃダメだよな。進藤みたいにカッコ良くないし、カッコ良く出来ないし。でもそんな事言いながらもやっぱり負けたくないってゆーかさ、少しでも近づこうなんて、無意味な努力したりして』
…分かるよ、分かる。あたしもそう。ダメだって思いながらもやっぱり諦められなくて、無駄だって分かりながらもそれを続けて。
『でも分かるんだよな、霧野さんが進藤の前と俺の前で違うのが。廊下で会った時の俺と進藤を見る目が違うのが。霧野さんはさ、進藤に対して心開いてる感じがするんだ』
そうだよね。好きな人の視線って気持ちまで分かっちゃうよね。ずっと見てるうちに分かるようになっちゃうんだよね。だから…分かりたくない事まで、分かっちゃうんだよね。
『なぁヒロ。こんな事聞いたら卑怯かもしんないけど…霧野さんってやっぱりさ、進藤の事好きなのかな』
…結局、卑怯かもなんて言いながらも、コースケが聞いてくるのはそこなんだ。自分の事をなんて言ってるかとか、自分の事どう思ってるかとかじゃなくて、レナちゃんの気持ちは?ってとこなんだ。それできっと、コースケならこう言う。
『負けたくないとはやっぱ思うけど…でも霧野さんが進藤の事好きならさ、俺、応援しようと思う。霧野さんの事好きだから、だから応援したいんだ。それくらいなら俺にもきっと出来るから』
…やっぱり。やっぱりそうなるんだ。やっぱりコースケは、どこまでいってもコースケだ。
応援しようなんて、そんな事を言うコースケはやっぱりバカだ。やっぱりコースケはあたしとは違う。こんなぐちゃぐちゃの真っ黒なあたしとコースケは似てなんてない。コースケはどこまでも真っ直ぐでどこまでも優しい。バカがつくほど…やっぱり優しくて、カッコ良い。