優しくないっ、優しさを感じない!


そんな彼はーー気がつけば、あたしの中で、無くてはならない存在になっていた。


あたしを支える何より大事な。そしてあたしを揺るがす何より大きなーーそんな存在になっていた。



ーー行こう。



あたしは、想いを込めて一歩踏み出す。

閉まっていたそのドアを開けた。

するとそこには見慣れた風景が広がっていてーー



「……居た」



そこは、あたしの後ろの席。レナちゃんの席に座る、一人の人物。



「なんで居るの?…進藤」



その時まずあたしがかけた言葉はそんな言葉で、すると奴はゆっくり窓の方からこっちの方へと振り返ってーー



「なんか、そんな気分だった」



ーーなんて、どこか聞き覚えのある言葉を返して、笑った。


あたしを見て、奴は笑った。



「こっち来なよ。そのために来たんでしょ?」

「……」


そして微笑む進藤に促されるままに、あたしもいつものあたしの席に座る。

それはいつも通り。いつも通りのその目的のためにあたしが来た…って、進藤は思ってるけど、


「…違うよ」

「え?」


あたしの答えに、進藤はピタリと動きを止める。それってつまりーーと、きっと奴の事だ。そこまで思考は進んでるはず。


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