マルカポーネの心配事
大きな丸い目から涙が溢れ出す。

飼い主である、森崎由紀はコートも脱がずに俺のゲージを開き、飛び出す俺を抱きしめる。

「【別れよう】って、メールで言われたー!」
その腕に力を入れて号泣。

くっ……くるしい。

「電話しても出ないしー。何でメール?何で直接言ってくれないのよ!」
ボロボロボロボロ泣くばかり。

何でったって
女捨てんなら、メールで十分なんだろーが。

「あんなに好きだったのにぃ」

だよなー。
お前イキイキしてたもんな。

「私の事を『好き』って言ってくれたのにぃ」

そりゃぁさぁ
言わないとヤレないだろーが。

「ご飯も作ったし、夜中に『出て来い』って言われたらすぐ行ったし、コンサートのチケットもとってあげたし、服も買ってあげたのに」

尽くす女なんだよな。
てか都合のいい女。

「もうヤダー!」

その声
スピッツのチョコにそっくり。
やっかいな叫び声。

窓から入るオレンジ色した街灯が、由紀の顔を照らす。

可愛い顔してんだよ。
目は丸くて黒目がちで
唇も色気あるし
小柄で細身で、胸はないけどさ、それなりの女の身体でさぁ。
いつもお堅くまとめている髪は、ほどいたらふんわりと肩の下まであって、俺の鼻みたいに艶もあるし。
職場だって地方銀行で、賢いと思うんだけど

男に関しては賢くないんだよなー

悪い男ばっかり
引っ掛かってしまう。
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