これが、あたしの彼氏です。【完】
「お前、何にやにやしてんだよ」
「えっ、ニヤニヤしてた!?」
「ああ」
「……嘘。そ、そんなはずはないと思うんだけど…」
「…まあどうでも良いけど。お前まだ熱高いんだから、横になって寝てろよ」
「……あ、うん」
あたしはそう言った矢沢君の言うとおりにまたベッドへと体を預けた。
後々考えてみると、心配性も世話焼きもどっちにしろ矢沢君には似合わない言葉だな…と素直にそう思った。
「あ、矢沢君」
「あ?」
「…リンゴ、剥いてもらっても良いかな…」
「食いたいのか」
「うん。…甘いの、食べたくて」
「分かった。剥いて来る」
あたしが恐る恐る小声でそう言うと、矢沢君は意外にもそんな申し出をすんなりと受け入れて、不意にスーパーのビニール袋から真っ赤なリンゴを一つ取りだした。