ユーダリル

 切羽詰った声音に、廊下で成り行きを見守っていたメイド達が一斉に部屋の中に入ってくる。

 一目で状況を判断すると、ユフィールを他所にウィルの介護をはじめた。部屋の隅で佇むユフィールは、メイド達の慣れた動きに驚くばかり。長い間ラヴィーダ家で働いているからだろう、新人に近いユフィールは何をしていいのかわからない。ただ彼女にできることは、邪魔にならないようにするのみ。

「大丈夫よ」

「そうそう。すぐに元気になるわ」

「だから、気にしない」

 倒れたウィルを心配する素振りを見せていたが、言葉は軽やかだった。どうやらメイド達はこの結末を予想していたらしく、ウィルが倒れてことを楽しんでいた。そしてこれにより、ピーマン克服作戦は失敗した。


◇◆◇◆◇◆


 今回の件で、ますますピーマン嫌いになってしまったウィル。ユフィールの努力も空しく、好き嫌いが克服されることはない。しかし二人の仲が悪くなったということは、決してなかった。そのことは喜ばしいことであったが、二人の仲は今以上に進展することはなかった。
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