ユーダリル

 一方説教をされたアルンは目を丸くし、セシリアを見詰める。莫大な権力を有している為に、他者からの説教などここ十数年されたことがない。久し振りとも取れる内容に、動揺を隠せないでいた。

 人は、他者の注意によって成長する。しかし、アルンはそれをされていない。十代前半で両親と離れて暮らし、赤ん坊のウィルを育てる。苦労に関しては人一倍しているが、肝心なところは期待できない。

 これによりアルンはブラコンと化し、周囲を苦しめる。それは悪いことではないが、自分中心に物事を考える。手を打たなければならないと思いつつも、切っ掛けが見付からなかった。

 だが、その切っ掛けを見詰めることができない。これにより少しは性格が直ると期待するも、アルンの表情から窺い知るのは「駄目」という文字。流石十数年の長きに渡って、莫大な権力を有しているだけある。セシリアの説教が効かないとなれば、残りはひとつしかない。

「では、結婚させましょう」

「何を?」

「勿論、ウィル様とユフィールですよ」

 流石にこの一撃は効いたらしく、アルンは固まってしまう。そして必死に「何故だ」という言葉を連呼し、その意味を問いただす。やはりブラコンアルンには、これが絶大な効果を示す。

「アルン様の将来の為です」

「そ、そうだな」

「自覚があるのでしたら、お願いします」

 いつもウィルのことばかり考えているアルンであるが、本当は自身の身を固めることを考えなければならない。内心アルンはセシリアのことを好いており、無論セシリアもアルンのことを好いている。

 表面上明確に表れないが、相思相愛の良い関係である。だが、いかんせんそれを邪魔するモノがある。それはアルンの「ブラコン」であり、セシリアは表情には表さないが、そのことについて悩んでいる。

「ウィルは……」

「その話は別です」

「わ、わかっている」

「そうでしょうか」

 弟の恋愛に口を出すが、いざ自分の恋愛になるとへたれ思考になってしまう。そのことさえ見抜いているセシリアは、この先どのようにしてくれるのか問いただす。もしセシリアはアルンと一緒になれないとわかったら、別の人物を見つけ違う人生を歩む決意をするだろう。
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