なんで私が芸能人ッ!?
それから1つ角を曲がって、先輩の足が止まったかと思うと話しかけられた。
「りま……、何があった?」
「なにも無いです。」
「嘘つくんじゃねぇよ!!」
いきなり先輩が大きい声を出し、肩が震えた。
「約束したよな……?
なにかあったらなんでも言うって。」
「………………。」
「りま!!」
先輩の声が頭に響く。
でも………
「同情してる先輩に、話したいことは一切ありません。」
そう言って立ち去ろうとした。
だって、今にも泣きそうになっちゃったから。
「は?……待てよ、りま!」
「………なんですか?」
振り向かずに答える。
「同情ってなんだ?
俺がりまに同情した覚えは全く無いぞ。」
……無自覚なんだ。
それ、私的にもっと質悪いよ……。
「私が気づいてないと思ったんですか!?
叔母の話をしたとき……一瞬歪んだ顔っ。」
先輩の方に向き直る。
「ずっと……同情してたんですよね。」
ああ、ほら。
やっぱり先輩困った顔してる。
だから嫌なんだ、無自覚は。
………こっちが罪悪感感じないといけなくなっちゃうじゃん。
ほんと、質悪い。
「………………。」
今度こそ無言で立ち去る。
…………やっぱり涙は止められなかったなぁ。
それからスタジオに戻った私は撮影に入った。
もちろん涙は拭いて、芸能人のりまになってから。
こんな状態の私に演技なんて出来るわけもなく、何回もNGを出した上で休みを置こうという名目で帰された。
「………矢城さん、ちょっと良いかしら。」
先輩と帰ろうとすると、またしても宮崎さんに話しかけられた。
「大丈夫ですけど……。」
その場から少し離れたところで話しに応じる。
「さっき、もう言うことはないと思ってたけど2つだけ。」
「……はい。」
「私は今のあなたの状態がなんで起こったのかは知らないわ。
だけど、なにがあっても、どんな自分が辛くても………それをまわりに気づかせないのがプロ。
平気な顔して、いつも通りに演じるのが一流の女優よ。」
「…………………。」
私に向かって話す宮崎さんはまるで、自分自身に言ってる様。
凛と話す宮崎さんの目は、それを言うに足る経験をしてきたのだと語っている。
たかが1つだけ、私より年が上の女性がそれを言えるのだと、それが私との違いだと思い知らされる。
これが1つ目。そう言う宮崎さんは私に近づいて、真横に来たところで一瞬だけ止まり問いかけてきた。
「それと二つ目。
あなたにとって演技……未夢って何?」
宮崎さんは、それだけ言うと私を通りすぎていった。
………私にとっての、演技と未夢?
そして私は、気まずい先輩との帰り道に耐えながらこの問いの答えを考えていた。