ポーカーフェイス

「ゆう、と…?」

「あ?」


 家に帰って、恐る恐る尋翔は悠翔に喋りかけた。

 
「今日…どうして、睨ん…だの?」

「別に理由なんかねーよ」

「…そ、っか」


 ショボンと尋翔が首を落とすと、悠翔はクルリと踵を返し、自分の部屋へと戻って行った。

 パタンと静かにドアと閉めると、悠翔はその場にうずくまった。


「ち………っく、しょう…」


 好きで…こんなんなったわけじゃねぇのに…。


「なんで、俺だけ…」


 ポタ…と、床に何かが落ちる音がした。

 悠翔は、バンッと勢いよく、ドアに握り拳をぶつけた。


「なりたくてなったわけじゃねぇ……ねぇのに…!!」


 声を押し殺して、叫ぶ。

 
「ちょっと、ゆう!ドア叩くんじゃねぇよー!」

「うっせぇ!!」


 階下から、母親が悠翔に注意したが、悠翔は反論した。反抗期である。


「くそ。ケーワイババアめ……。空気読めってんだ」


 年上の悪とつるんでいたからなのか、その辺の言葉はよく耳にしていた。そのため、小学生低学年とは思えないような言葉遣いを、時折悠翔はした。

 
「ゆうー!メシー!」

「いらねぇ!!」


 階下から、やはり母が声をかけた。それに反して悠翔が叫ぶと、少しの間があり、ダンダンとものすごい音が階段から聞こえた。





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