ポーカーフェイス
「おめぇよお!!」
ダンッ!とドアが開き、
「わあっ?!」
ドアにもたれ掛って座っていた悠翔は、後ろに倒れた。
目の前には、天井を背に激怒した母の顔が見えた。
「さっきから、どういう態度取ってんだ?!あぁ?!」
「うっせぇなあ」
「その態度の事言ってんだよ!バカ息子!」
元ヤンキーだった母は、腰にまでかかる長い髪のてっぺんは地毛の黒、そこから下は金髪だ。悠翔と尋翔の整った顔立ちの半分は、母親の遺伝であろう。
「ひろも心配してんだろがあ!」
悠翔の性格は母親譲り、尋翔の温和な性格は父親譲りである。
「うっせんだよ、ババア!」
ムクリと起き上がると、母の方を見ずに悠翔は叫んだ。
「ババア言うな!バカ息子!あたしゃまだ、32だよ!バカ息子!」
「バカ息子言うな、32のババア!」
「おめーの顔の両側についてるのは水餃子かあ!?ババア言うなっつったろ!」
と、短気な2人が言い合いをしていると、タンタンとリズム良い音が、階段から聞こえた。
「夢子(むうこ)?ああ、悠翔。ただいま」
ひょっこり顔を出したのは父親である。
そのたれ目は、尋翔が受け継いでいる。
ちなみに夢子とは母親の名である。
「もう、晩ご飯食べていいよね?」
「あ、うん。ごめん。翔汰(しょうた)。先食べてて。ひろも一緒にさ」
「うん。分かったよ。……程々にしなよね」
「分かってるよ」