ポーカーフェイス

「翔汰もああ言ってる。……なぁ、そろそろあいつらとつるむの止めてくんねぇか?」

「なんで、てめぇに言われなきゃなんねぇんだよ…」

「そりゃ……。お前が死ぬほど大事だからだよ」

「はあ?!」


 そっぽを向いた夢子は、ポソリと呟いた。


「今……なんつった…?」

「ああああ!!なんでもねぇよ!バカ息子!ほら!メシだぞ!!」


 1人で勝手にキレた夢子は、グルンッと勢いよく振り返り、赤い顔のまま階段を降りて行った。


「メシなんざいるか!くそババア!!」

「もっぺん言ってみろ!!引っぱたくぞ!」


 階下から聞こえた声を丸無視して、悠翔は部屋へ閉じ籠った。

 夢子が言っていた、『あいつら』とは、この辺で問題視されているグループの事である。その名も『吐羅威暗狂(とらいあんぐる)』。ふざけた名前ではあるが、つけた当人たちは大真面目であろう。

 いつの時代の暴走族だと、突っ込みを入れたくなるのは、至極当然の事である。

 どうやら、その吐羅威暗狂の族長が、好きな女を巡り三角関係だったようで、結局のところ成就しなかった恋なのだが、そのせいでグレた族長が考え出した、まあ、何ともいえないグループ名なのである。


「ダセェよなあ……」

 
 とは思いつつも、なんやかんやで悠翔は吐羅威暗狂の面々とつるんでいるわけだ。

 その組の中には、夢子の知り合いも子供もいるわけで。

 これから先、真っ当な人生を悠翔に送ってもらいたいと願うのは、親として当たり前の気持ちである。


「クソ……」

 
 階段を降りながら夢子は呟いた。

 自分がこんな人生を送っていなければ、きっと悠翔や尋翔もまともな人間に育ったことだろう。


「後悔しても、遅ぇよ……よな」

「夢子」


 階段の下で待っていたのは、夫の翔汰であった。

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