大工さんに恋していいですか?おまけ追加中
私も驚いているが、博さんも驚いている。

…私は今の状況を、冷静に見る事が出来ない。

・・・はぁ。

安堵の溜息をついた博さん。

私の手をそっと掴んだ博さんは、しゃがみ込む私を、

そっと立たせた。


「ここに買い物?」

「…のつもりだったんですけど、何を買いに来たのか、

忘れてしまって」

そう言った私を見た博さんは、クスッと笑った。


「別にないんなら、家まで送るよ。また、さっきみたいなやつらがいると

厄介だし」

・・・ね?と、首を傾げ、優しく微笑んだ博さんに、

私は小さく頷いた。


「…ゴメンね、仕事用の車だから、汚いけど」

「いえ、そんな」

助手席に乗せてもらって、いざ、車が出発したものの、

思い出してはいけない事を、たくさん思い出す。

指輪の事・スーツの事・デートの事・・・

どうしていいかわからず、唇を真一文字に結び、外に目線を向けたまま。




「・・・あのさ」

そんな私に、前を向いたままの博さんが声をかける。

私は目線を、博さんに移した。
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