先輩上司と秘密の部屋で

「……杏奈?」


幻でも見ているかのような光景に、隼人は胸を熱くする。


「どうしてここに……」

「……あれ……もう朝?」


杏奈は寝ぼけ眼で隼人を見上げ、二重の幅が広くなった片目を散漫な仕草で擦っていた。

それは隼人の理性を壊すのに、十分な破壊力を持っている。

杏奈が思春期を迎えてからというもの、過度なスキンシップは極力こらえていたのに。


「んっ……」


隼人はたまらず杏奈を腕の中に抱き寄せて、頭の上に頬ずりまでしてしまう。

この際どんなに怒られても構わないと、隼人は思った。

帰ってくるのを待ち焦がれた杏奈が、こうして目の前にいるのだから。


「お兄ちゃん、ちょっと苦しい……」


腕の中にいる杏奈が、本気で嫌がっている様子はない。

いつもなら全力で抵抗されるため、隼人はチャンスとばかりに、その柔らかい温もりを心ゆくまで堪能していた。


「こっそり帰ってきて俺のベッドで一緒に寝るなんて、余程ホームシックだったんだね」

「違っ……お兄ちゃんが手を離してくれないから……仕方なく……」

「へぇ?」

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