ラブソングは舞台の上で

「いらっしゃい。どうぞ」

中へ促したが、晴海はその場を動かなかった。

「……いや、ここでいいよ。俺また何するかわかんねーし」

どうやら晴海はおとといのことをとても反省しているらしい。

「嫌だよ。私寒いもん」

そう言って睨みを利かせると、大人しく中に入ってくれた。

とりあえずソファーに座らせ、二人分のコーヒーを淹れる。

簡易ドリップ式のコーヒーは、開封した途端に良い香りが立つ。

彼は緊張しているようだから、この香りで少しでもリラックスしてもらえることを期待する。

晴海にはブラックを。

私は砂糖と粉末のミルクを混ぜた。

「どうぞ」

「どうも」

「殴ったりしないからそんなに固まらないでくれる?」

「無理言うなよ。俺は今、己の罪を噛み締めてんだよ」

「罪って、何それ」

私が笑うと、晴海は苦い顔をしてこちらを見た。

私もソファーに、つまり晴海の横に座りたかったが、余計に晴海を固めてしまいそうだ。

仕方なく、ラグの上に腰を下ろし、コーヒーをすする。

晴海も自分を落ち着かせるように一口すすった。

「うまいな。俺んちのコーヒーと全然味が違う」

ふと笑顔になる。

「そう、よかった」

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