ラブソングは舞台の上で

「これなに?」

「開けてみて」

リボンを解き、包装紙を剥がすと、白い箱が現れた。

箱を開けると、更に弾力のあるレザーのケースが収められていた。

「マトリョーシカみたいなんだけど」

「もう、次で最後だよ」

恐る恐る、ケースを開ける。

中身は腕時計だった。

ピンクゴールド色を貴重とした華奢なデザインのそれは、文字盤に宝石が埋められていて、とても美しい。

「可愛い! 私に?」

「うん。ペアウォッチ」

そう言って自分の左手首を見せる。

晴海の腕にはシルバーの時計が着けられていた。

文字盤のデザインが私のものとよく似ている。

これまでお揃いのものなど持ったことがなかったから、嬉しくてちょっぴり照れくさい。

「でもどうして? 誕生日でもないし、ホワイトデーは配達でもらったよ?」

記憶が確かならば、何の記念日でもなかったはずだ。

私が首をかしげて見つめると、晴海の表情が急に固くなった。

「いや、ほら。これから一緒に時を刻もうってことで。何となく明日香が俺んとこ来ることになったけど、ちゃんと言ったことはなかったからさ」

「え?」

早口で一気に捲し立てるから、ちゃんと聞き取れなかった。

私の表情がハテナだらけであることに気付いた晴海が、数秒黙って、息をつく。

そして枕のところに転がっていたリモコンでテレビを消し、しんと静まったところで、告げた。

「俺の奥さんになって」

いつかどこかで聞いたことのあるような、リズムとメロディだった。

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