人見知りのキリスト
健ちゃんの家につくまで10分ほどはかかったか。

足元が悪くなければ、3分で着いていたところだ。

マラソン選手の感動的なゴールシーンよろしく、俺は膝に手を突き大きく肩で息をしていた。


「ここだったはずなんだけどな……」


澄人少年が一軒の家を見上げながら、そう呟いた。

敷地は四十坪ほどだが、建物は明らかにカネのかかった普請だ。

車庫にはブラックのポルシェが停められていた。

何の個性も感じられないハウスメーカーお仕着せの戸建住宅が密集する地域にあって、健ちゃんの家は一際異彩を放っていた。


――まずいな……。



五年前、健ちゃんの家はプレハブ二階家から今の鉄筋コンクリート住宅に建て替えられていた。

モダンな香り漂う現代建築も今日みたいな曇天の日にはそぐわない。

俺には巨大な墓標にしか見えなかった。


澄人少年の目にはどう映っているのか。

一夜にして現れた悪魔の要塞とでもいったところか。



――もうここにはいないんだよ、8歳の健ちゃんは。
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