甘く響く
//1序章

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それは
日差しの暖かい
よく晴れた春の日だった


「このお花ください」

小さな花屋の店先で
スーツを着込んだ男性が声をかけた

この花屋の一人娘であるレイは作業をやめて振り向き、男性が指差す花を見て微笑んだ

男性が指差した花は
この街ではプロポーズする時に渡す定番の花
背の高い白い花だった

「リンリンですね」

その花の名はリンリン
小さな実を付けるが、実がなっても花が落ちない珍しい花
実から、甲高い鈴のような音がすることからリンリンと名付けられた

レイは1番よく咲いているリンリンを抜くと、手際よく包装した
最後に赤いリボンを結ぶ

「この店で買ったリンリンでプロポーズすると上手くいくって噂を聞いたんです」

男性はレイが差し出すリンリンを大切そうに受け取った
レイは男性の話を聞いて驚いたが
すぐに微笑む

「そんな噂があるんですか?光栄です」

そう言って胸の前で手を組む

「あなたと、あなたの大切な方が幸せになりますように」

レイが呟くように言うと
男性も嬉しそうに笑った

「うまくいったら彼女と花、買いにきます」

レイは頷いて見せた
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