甘く響く

「…あなたにも誰かリンリンくれないかしらねぇ」

後ろから急に声がして驚き、レイは振り返った

レイの母、ジーンが仕入れから戻ってきたところだった

「私はまだ…花の勉強がしたいの。だからまだ結婚なんて…」

「あなたの頭の中はいつも花ばっかりなんだから」

呆れたように言う母の言葉を
どうにか誤魔化したいと思っていたところに
タイミングよく次のお客さんが来た

「いらっしゃいませ」

にこやかに言うと
店先に立つ男性はレイをじっと見ていた
銀縁のメガネに清潔そうな短い髪
黒のジャケットとグレーのパンツ
胸には金のブローチ

じっと見つめられて何事かと
レイは小首を傾げた

「あなたが、レイさん、ですか?」

男性はゆっくりとした口調でそう聞いてきた
急に名前を呼ばれて驚いたがレイは小さく何度か頷いた

レイが頷いたのを見て
男性はレイ以上に驚いた顔をした
そして深々と頭を下げた


「ちょ、え?あの」
「お願いします!お力を貸してください!」

驚くレイにかぶせるように言われて
何がなんだかわからない
レイとジーンは顔を見合わせた
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