あなたがいなければ。【短編小説】
「――奈!!なんで―――だよ!」
何を言ってるの?
誰なの?
それは…。
『大丈夫だよ。』
『なんで?』
昔の夢。
『俺が守るから!』
『本当に!?』
『うん!本気と書いてマジと読む!』
『なんかたっ君らしいね!』
『おう!任せとけ!』
『じゃあお願いしよっかな?』
『よし来たぁ!任せとけぇ!』
『うん!』
そして場面は変わり…
『なんで?』
『ごめん。』
『守ってくれるんじゃなかったの?』
『守るよ。』
『傍にはいてくれないの?』
『ごめん。傍にはいられない。』
『たっ君の嘘つきぃ!』
『ごめん。だけど…』
『うぅぅ。ヒック』
『迎えに来るから。』
『本当に?』
『うん。俺、格好いい大人になって迎えに来るから。』
『今度こそ約束ね?』
『あぁ!』
『…じゃあ、またね?』
『…』
そう言って、幼き私は反対を向いて歩き出す。
でも…
『慧里奈!』
『なぁに?』
『約束の印!』
チュッ
唇に暖かいものがあたる。
きっと幼い私の顔は真っ赤だろう。
そうだ。私…この時に初めて…たっ君が私のファーストキスの相手だったんだ。
『これが印!』
そう言う幼いたっ君も顔が真っ赤だ。
『…。』
『…。』
『じゃあ…約束ね?』
『あぁ!』
『じゃあまたね!』
『あぁ。絶対迎えに行くから!』
『うん!待ってる。』
『じゃあな!』
『うん!』
車に乗っていくたっ君を見て笑顔で手を振る。
だけど…
『たっ君!!』
「たっ君行かないで!」
「うわぁ!」
「ハァハァハァハァ」
「びっくりさせんなよ!」
「へっ!?なんでここにいんの!?」
「だってもうお昼だし…」
「はぁ!?」
慌てて腕に付けている時計を見る。
そこに記されているのは、短いのも長いのも上に向いている針。
「マジかぁ。」
「…」