あなたがいなければ。【短編小説】
★バージョン晃★
俺は最初から気になってたんだ…
会ったときから慧里奈のことが。
目を瞑り、小さい頃を思い出す。
出会ったのは7歳の頃で、それから毎日遊び始めた。
慧里奈の一番近い場所で、
その可愛くて、優しい笑顔を見ていたかったんだ。
でも慧里奈はある日を境に、笑わなくなった。
…いや。
作り笑いをするようになったんだ…。
俺は あの笑顔が好きなのに…。
そう思った。
この時に気付いたんだ。
自分の気持ちに…。
なんでこんなに慧里奈の笑顔が好きなのか考えたら、すぐにわかった。
それは、慧里奈が好きだから…。
そういう風に気づいたら、一気にある思いがこみ上げてきた。
慧里奈を助けてあげたい。
俺が慧里奈を守ってあげたい。
そう思ったんだ。
だから…
『慧里奈!何か隠してるだろ!』
『…何も隠してないよ~』
そう言って、また作り笑い。
『作り笑いは止めろよ!』
『!』
『悲しい顔もすんなよ!俺はお前の本当に笑ってる顔が好きなんだから!』
『ほんとに!?ありがとう!』
慧里奈は気付いてない。
俺は軽い気持ちで好きなんて言葉は使わない。
『ばか。』
『へ?』
『だぁかぁらぁ!』
『何?』
この時はだんだん馬鹿らしくなってきて…
『大丈夫だよ。』
そう言った。
返ってきた答えは
『なんで?』
無理もないか。
『俺が守るから!』
『本当に!?』
『うん!本気と書いてマジと読む!』
『なんかたっ君らしいね!』
『おう!任せとけ!』
『じゃあお願いしようかな?』
『よし来たぁ!任せとけぇ!』
『うん!』
そう約束した。
だけど、一つ重要な事に気が付いて…
『何から守ればいい?』
『あっ。そっか…。』
『じゃあ慧里奈が今一番嫌な事から守ってやる!』
『…じゃあお兄様から。』
『え!?なんで?』
『…あのね…。』
これが最初。
慧里奈から聞いた話が、兄貴からキスされたりしてたこと。
慧里奈は泣きながら喋ってた。
声も震えていて、怯えていた。
だから、ずっと慧里奈の手を握ってた。
大丈夫って気持ちを込めて…
「だから…。ずっと好きだったから。」
目を開けて慧里奈を見る。
目には、いっぱい涙がたまっていて…。
俺は慧里奈を抱き締める。
「慧里奈の事が大好きだから。もう二度と離さなしたくない。」